風倉匠と3号倉庫の作家たち
会場 ギャラリー58 ←詳細clich
会期 2023年7月6日(木)−7月22日(土)
時間 12:00-19:00
休廊日 日曜日/土曜日は17:00まで
ギャラリー58(東京都中央区銀座4-4-13 琉映ビル4F)
タイトル:うんう(雲雨) ~ ナーグスクウシデーク(ヌジュミ)~
素材:ムチ(琉球漆喰)、アクリル絵具、キャンバス
サイズ:65.2✕50.0cm 4枚組
出品作品の制作にあたって
沖縄本島から車で渡れる離島(宮城島)で、約 400 年前から続く神事、ナーグスクウシデークを踊る、一人の少女をテーマにしています。
ナーグスクウシデークは、島の婦人たちでハチグヮチジューグヤ(旧暦の8月15日)にひっそりと行われる男子禁制の神事ということもあり、一般的にはほとんど目にする機会がなく、故に観光の名物になることもないまま、人知れず地域で受け継がれてきた踊りです。
昨年、うるま市島しょ地域で開催された「うるまシマダカラ芸術祭」出品の際、取材や交流をさせていただく機会があり、ウシデークを題材にした絵画作品群を制作し発表しました。芸術祭後も、宮城ウシデーク保存会の方々と交流の機会があり、その際目撃した、ウシデークを踊るある一人の少女にスポットを当て、今回の作品を制作しました。
その少女は、宮城島出身者の家系に生まれ、現在沖縄本島で暮らしているそうですが、小学校のクラブ活動のあと宮城島まで渡り、おばぁ達の踊りの練習に積極的に参加し伝統を引き継ごうと取り組んでいます。近年70 代~90 代の方々が主軸の踊りとなり、神事であることから観光名物や生業になるわけでもない素朴な営みに、自らの意思で関わり取り組む姿勢は、藝術活動そのものだと感じますし、現代社会に大切なことを問いかけてくれる、ヌジュミ(希望)だと感じました。
何を引き受け、何を残し、何を伝えて行くのか。
3号倉庫がクローズして10年以上が経ち、総合ディレクターの風倉さんや、あしながおじさんが他界されたいま、我々は何を表現するのか。そう考えた時に、この少女の営みに、ただただ惹かれて行ったのです。
ナーグスク(宮城)ウシデークやこの少女にまつわる未来に、恵みの雨が降り注ぎますように。
ウシデークを踊る少女
場所:宮城島・しましま交流館
撮影:平岡昌也(2023年)
※琉球漆喰(ムチ)について
琉球漆喰は、日本の3大漆喰の1つ。古来沖縄では、珊瑚を焼いてつくった生石灰に、稲わらと水を入れ、石うすで細かく砕き作っていました。その姿が、もちをつく様子に似ていたことから、ムチ(=もち)と呼ばれるようになりました。
ムチの材料となる“わら”は、沖縄の伝統行事・大綱挽の綱を再利用されています。那覇大綱挽は、家庭円満、商売繁盛、子孫繁栄、無病息災の想いのこもった伝統行事として那覇観光の名物の1つとなっています。本土復帰の前年、1971年の10月10日に復活した経緯から、「10・10那覇空襲(十・十空襲)」(じゅう・じゅうくうしゅう)で被害にあわれた方々への鎮魂の意味合いもあります。
沢山の方々の想いのこもった“わら”で絵を描くことを、近年の絵画制作で大切にしています。
那覇四町綱之図
作者不明、19~20世紀、930mm×1620mm